八巻 侑司
トップエージェント
保有資格:宅地建物取引士(神奈川)第107414号/JSHI公認ホームインスペクター
大手不動産仲介会社にて11年、都内・神奈川を中心に350件以上の取引実績。 土地・戸建・区分・収益不動産の売買取引に従事。2023年7月よりらくだ不動産に入社。得意エリアは神奈川、城南・城西地域。

「住み替えをするなら、買い替え特約をつけておけば安心って聞いたけど……本当にそうなの?」
「売却する物件に買い替え特約をつけると、売りづらくなるって聞いた。それって本当?」
住み替えを検討し始めると、こうした疑問にぶつかる方は少なくありません。買い替え特約(かいかえとくやく)は、住宅ローンが残ったマイホームを売って新居に住み替える方にとって、資金計画のリスクを抑える心強い制度に見えます。
ただ、この特約は「つけておけばとりあえず安心」というほど単純なものではありません。つけ方や期限の設定、相手側への説明の仕方ひとつで、売主・買主どちらの立場でも思わぬ不利益を被るおそれがあります。実際、売却を有利に進めたいはずの特約が、逆に「購入希望者に選ばれない理由」になってしまうケースもあるのです。
この記事では、住み替え・買い替えを検討している方に向けて、買い替え特約の基本的な仕組みから、現場でよく見られるトラブルの実例、そして後悔しないための注意点まで、不動産エージェントの現場感覚を交えて整理していきます。
この記事のポイント(先にお読みください)
買い替え特約は、住み替え先や自宅の売却契約が万が一崩れた場合に連動して契約を解除できる取り決めです。ただし「使い方」次第で、売主・買主どちらの立場でも不利益になるおそれがある点に注意が必要です。
目次
買い替え特約とは、簡単に言えば「住み替えに関わるもう一方の契約が、自分の責任ではない事情で崩れてしまった場合に、こちらの契約も連動して解除できる」という取り決めのことです。
一口に買い替え特約といっても、実は「誰が」「どちらの立場で」つけるかによって、中身がまったく違います。ここを混同してしまうと、話がややこしくなってしまうので、まずは整理しておきましょう。
これは、自宅を売却する売主様がすでに買い替え先(住み替え先)を契約済みで、まだ引き渡し・決済を受けていないという状況で使われるケースです。
すでに買い替え先を契約し、住宅ローンの本審査も通っている段階だとしても、買い替え先が万が一「白紙になってしまった」「ハウスメーカーが倒産してしまった」「新築マンションの引き渡しが延期になった」といった事態が起きるおそれはゼロではありません。そうなると、そもそも住み替えをする理由がなくなってしまいます。
そこで、買い替え先の契約が万が一なくなってしまった場合に、こちらの売却契約も連動して解約できるようにしておく。これが売主側の買い替え特約の役割です。
一方、買主様側がつけるケースは、自宅に住宅ローンが残っていて、その自宅の売却契約はすでに済んでいるものの、まだ引き渡しを受けていないという状況で使われます。
新しい住み替え先を見つけて、いざ売買契約を結ぼうというタイミングで、自宅の売却契約が崩れてしまうと、そもそも資金計画そのものが成り立たなくなってしまいます。自宅の売却代金を新居の購入資金に充てる予定であれば、なおさらです。
そこで、自宅の売却が、自分の都合ではなく先方の事情など「自分の責めに帰すことのできない事由」によって解約になった場合には、こちらの購入契約も連動して解除できるようにしておく。これが買主側の買い替え特約です。
では、なぜこの特約が「知らずにつけると損をする」と言われることがあるのでしょうか。ここからは、現場でよく見られる注意点を具体的に見ていきます。
現場でとくに注意が必要なのが、「買い替え先がまだ何も見つかっていない」状態で買い替え特約をつけようとするケースです。
考えてみれば当然のことですが、買い替え先が全く未確定の状態で「買い替え先が見つからなかったら解除できます」という特約をつけてしまうと、売主様の側は「買い替え先が見つかりませんでした」と言えば、事実上いつでも契約を解除できてしまいます。買主様からすれば、いつ白紙になるか分からない不安定な契約を結ばされているようなものです。
どこまで話が進んでいて、解約のリスクがどの程度まで小さくなっているのか。「ここまでステップを踏んでいるからほぼ大丈夫だろう、それでも万が一のためにつけておく」というレベル感ならまだしも、何の見通しも立っていない段階で安易につけるのは、かなり危険な使い方だと言えるでしょう。
もう一つ、現場でよく見られるのが、売主側の買い替え特約が、購入を検討している買主様の判断に影響を与えてしまうケースです。
ある中古マンションの購入を進めていたお客様のケースでは、売主様が新築マンションへの住み替えを予定しており、契約直前になって「買い替え特約をつけたい」という話が出てきました。ただ、このときはたまたま、売主様の買い替え先の住宅ローンがすでに本審査を通過しており、しかも買い替え先の新築マンションはすでに完成済みだったため、「よほどのことがない限り白紙にはならないだろう」という状況が確認できていました。そのため、買主様にはその背景をきちんと説明したうえで、リスクはゼロではないものの、買主様が物件を気に入っていたこともあり、そのまま契約に進むことができたという経緯があります。
一方で、買主様によっては「売主様側の事情に左右される契約」自体に抵抗を感じ、同じマンション内の別の部屋を選び直すといった判断をされることもあります。買い替え特約は、使い方次第で買主様の購入意欲そのものを下げてしまう要因にもなり得るのです。
もう一つ見落とされがちなのが、「いつまでに解除できるか」という期限の設定です。
たとえば、引き渡しの前日まで解除できるといった期限設定では、その頃には買主様側もすでにリフォームの準備や賃貸の解約手続きなど、具体的に動き始めている可能性があります。それでは、いざ解除となったときのダメージがあまりに大きくなってしまいます。
契約から1カ月程度など、リスクを見極められる合理的な期間を設定し、その期間が終わってから買主様も本格的に動き出せるようにする。こうした期限のコントロールも、買い替え特約を安全に機能させるうえで欠かせないポイントです。
ここまで見てきたように、買い替え特約は「つけるかどうか」よりも「どうつけるか」が重要です。では、実際にどのような点に気をつければよいのでしょうか。
買い替え特約を必ずしもつけない場合でも、リスクをゼロにする工夫はできます。たとえば、コントロールしにくい側(買い替え先や自宅の売却など、自分の意思だけでは決められない契約)の手付金を低めに設定し、自分でコントロールできる側の契約については、手付解約になっても金銭的なマイナスが出にくいように調整するといった方法です。
特約をつけるかどうかの二択ではなく、手付金の水準や解除期限といった条件を組み合わせて、リスクの大きさそのものを小さくしていく。これも現場でよく使われる考え方です。
「自宅の売却に買い替え特約をつけると、売りづらくなってしまうのでは」という不安を持つ方も多いのですが、これも一概には言えません。
特約があること自体が問題なのではなく、「なぜこの特約が必要なのか」「リスクはどの程度まで小さくなっているのか」を、相手方の仲介会社にきちんと説明し、納得してもらえるかどうかがポイントです。ここで、担当するエージェントの経験値や交渉力が問われることになります。
買い替え特約をつけて申し込みを入れても、他に競合する申し込みがあったり、内見の反応が良かったりすると、売主様側の担当者から「特約をつける方は見送りましょう」と判断されてしまうこともあります。「本当は特約がなくても構わない」というお客様にまで、仲介会社が親切心でつけてしまい、結果として選ばれなかったというケースも実際に起きています。
こうした事態を避けるためには、買主様の状況を丁寧にヒアリングしたうえで、特約が本当に必要かどうかを見極める視点が欠かせません。
住み替えを検討する際は、そもそも媒介契約の結び方や不動産会社の選び方によっても、こうした特約の扱われ方が変わってきます。一般媒介と専任媒介、どちらが高く売れるのかを整理した記事もあわせて参考にしてみてください。
ここまでの内容を踏まえて、状況別に考え方を整理してみましょう。
買い替え先の契約や住宅ローンの審査がまだこれからの場合 → 特約をつける必要性が高いものの、期限の設定や相手方への説明を丁寧に行う必要があります。
買い替え先の本審査が通り、物件も完成済みなど、リスクがかなり小さくなっている場合 → 特約なしでの進行や、期限を短く区切った特約での進行も選択肢に入ってきます。
自宅の売却がまだ何も決まっていない段階で特約をつけたい場合 → かなりリスクの高い使い方になるため、慎重な判断が必要です。
このあたりの見極めは、売買の実務経験がある担当者かどうかで大きく差が出るところです。「大丈夫ですよ」の一言で済まされてしまい、リスクの中身をきちんと説明されないまま契約に進んでしまう方も少なくありません。誰にどう相談するかという入り口の部分も含めて、不動産エージェントと一般的な仲介の違いを解説した記事もあわせてご覧いただくと、判断材料が増えるはずです。
また、住み替えのタイミングでは価格交渉の余地があるかどうかも気になるところです。価格交渉ができる不動産・できない不動産についてまとめた記事も参考にしてみてください。
「特約をつけるべきか、つけないべきか、自分では判断できない……」
住み替えの資金計画・契約条件は、状況によって最適解が変わります。一度プロの目で整理してみませんか。
買い替え特約は、住み替えにともなう「連鎖する契約」のリスクを抑えるための有効な手段です。ただし、つけ方を誤ると、売主様・買主様どちらの立場でも不利益につながりかねません。
「大丈夫ですよ」という一言だけで契約に進んでしまうと、後になってリスクの中身に気づくということにもなりかねません。住み替えは、売却と購入という2つの契約が同時並行で動く、複雑な取引です。だからこそ、双方の状況を俯瞰して整理できる担当者に、早い段階から相談しておくことが安心につながります。
「今検討している買い替え特約、このまま進めて本当に大丈夫だろうか」「自宅の売却と新居の購入、どう進めるのが一番リスクが少ないのだろうか」。そんな不安をお持ちの方は、ぜひ一度らくだ不動産にご相談ください。売主様・買主様いずれの立場でも、中立な視点で最適な進め方を一緒に考えます。

トップエージェント
保有資格:宅地建物取引士(神奈川)第107414号/JSHI公認ホームインスペクター
大手不動産仲介会社にて11年、都内・神奈川を中心に350件以上の取引実績。 土地・戸建・区分・収益不動産の売買取引に従事。2023年7月よりらくだ不動産に入社。得意エリアは神奈川、城南・城西地域。
希望エージェントの空き状況を
確認したい場合は050-1745-5799まで
お電話下さいませ。
※10:00-17:00(定休日:火・水)